Bar 石の華 オーナーバーテンダー・石垣 忍「男として、ちょっと背伸びして、格好をつけて欲しい」
「女の子を連れて、おしゃれなバーでお酒を飲んでみたい!!」
そんなメンズのご要望に応えて、「バーに行くにはどうすればいいか?」を渋谷でバーを経営するバーテンダー『石垣忍』さんに伺ってきました。
目次
バーには、1店舗1店舗に、全く違う魅力がある
―なぜ、バーテンダーになろうと思われたのですか?
実は、私は初めからひたむきにバーテンダーを目指そうと思ったわけではありません(笑)。
もともと接客業、対面式の仕事に魅力を感じていたんですね。
高校時代に中目黒のカフェでアルバイトをしていた時、毎日のように、同じ時間に同じコーヒーを飲みに来る常連さんがいらっしゃったんです。
そこで、不躾な質問とは思ったのですが「毎回同じコーヒー飲んでいて、つまらなくないですか?」と聞いてみたんですね。
そうすると「若いからわからないのさ」と、笑顔で言われたんです。
そこで、界隈のコーヒーショップを数十件まわって、わからないなりにコーヒーをとにかくたくさん飲んでみました。
そうすると、それぞれの違いが見えてきました。
自分の店なりの独自性、違いを作ることで、その味に心を打たれるお客さんがいて、毎日通ってくださる常連さんになってくださるというのは、そういうことなんだと感激しました。
そして、あるとき見たトム・クルーズの映画「カクテル」が決定打になりましたね。
ジャグリングのパフォーマンスも格好良かったですが、とにかくたくさんのお客さんのオーダーに、スピーディーに、的確に、そしてパフォーマンスを交えて楽しませながらお酒を振る舞う姿を見て「こんな仕事がしたい」と思いました。
得意なカクテルは、産地に拘ったフレッシュフルーツやフレッシュハーブを使ったカクテルです。
格好いい『大人の男』は一人の時間を愉しむ余裕がある
『バーテンダーとして、カウンターに立っていると、出世する人とそうでない人はだいたい分かってしまいますね』
バーは、「人間としての品格」が試される場であり、人間として成長するための場でもあります。
今回、石垣さんからお話を伺う中でそれを強く感じました。
バーはワイワイと騒ぎながらお酒を飲む場ではなく、あくまでも静かにお酒を嗜む場。
自分のアルコールの許容量をしっかりと把握して、酔い過ぎないようにお酒を愉しむことがマナーです。
そして、何より「わからない時は、バーテンダーさんにちゃんと聞いて、お任せする」というのがバーの楽しみかた。
特に若いうちはついつい「聞くのが恥ずかしい」と思ってしまうせいか、よくわかりもしないのにドリンクメニューだけを見て無理に頼んだり、ちょっと調べたにわか知識を披露しつつオーダーをしちゃう…
そんな、ほろ苦い、ちょっと恥ずかしい経験は誰にでもあるものです。
しかし、逆にわかってくればくるほど、頼むべきお酒は自分ではわからないという境地にたどり着くもの。
「わからないから、教えてもらえますか?」と堂々と聞けること。
これこそが本当の大人の男です。素直に質問できることが実はとても格好いいのです。
そして、「挨拶」も大切。
日本ではまだしも、フランスではちゃんと挨拶しないと、レストランに入った時に店員さんに客として扱ってもらえない程だそう。
お店に入った時には「こんにちは」あるいは「こんばんは」。
そして、出されたお酒をゆっくり味わう余裕を持つこと。
気持よく挨拶をし、お礼を伝え、楽しい会話をして、飲み過ぎることなくお酒を愉しむ。
そういう方は、ビジネスでも成功されたり、昇進が早かったりというケースも多いそうです。
『男として、ちょっと背伸びして、格好をつけて欲しい』
というのも印象に残った言葉です。
等身大もいいけれど、若いうちはちょっとオシャレをして、夏だけどジャケットを羽織ってみたり。
一人の時間を楽しみながらグラスを傾けたり。
あまり頑張りすぎない程度に「今の俺、格好いいかも」と思えることにチャレンジして欲しいとのこと。
将来、後輩を連れてバーに入った時に堂々と振る舞って「先輩、場馴れしてますね。」と言われるように。
後輩から「デートにおすすめのバーないですか?」と聞かれた時に、1つや2つ紹介できるバーがあるように。
バーでゆっくり流れる時間を「愉しむ」。
これは、なんだか座禅を組むような感じでもぞもぞと慣れないものですが、だからこそ『大人の男』に成長させてくれる場なのですね。
初めてバーに行く人のための、バーのマナー&心得!!
- 室内では、帽子は必ず脱ぐこと
- お店にもよるが、ラフすぎる格好はNG
- 3名以上で行く場合、事前にお店に電話確認を
- 大声でしゃべらない。下品なトークは厳禁
- 隣のお客様にむやみに話しかけない
- わからないことは聞く
- お酒が飲めなくてもOK
意外なことに、重要なマナーはこの7つくらいだそうです。
どれも、一般的なマナーの範囲ですよね。
3つ目の人数は要注意です。
バーは席数が少ないところが多いので、3~4人で訪れる時には電話確認をすることがマナー。
意外なのは7つ目。
お酒が飲めなくても、バーを訪れることは歓迎だそうです。
海外のバーではノンアルコール・カクテルのメニューが丸々1ページあることも当たり前。
『石の華』さんでも、メニューには30個のノンアルコール・カクテルがズラリ。
ただし、普通のジュースとは違い、ノンアルコールでも普通のカクテルとあまり値段は変わりません。
作り方もこだわりも、ジュースとは別物であることを認識しておきましょう。
ちなみに、「大人で格好いい女性との出会いを求めて」というのは、避けたほうが良いとのこと。
そういう目的であれば、最近話題の「婚活バー」などを使う方がいいかもしれませんね。
バーでドキドキすることといえば、マナーや独特の空気感もそうですが、一番は「お代」という人も多いハズ。
「いくら掛かるんだろう?」と思いながら飲むお酒は、うまいもまずいもわからず愉しめません。
お代のことが気になるときには「一杯おいくら位ですか?」と、素直に聞くのがベスト。
ストレートに臆さず質問できることは『大人の男』の特権です。
ゆっくり自分と向き合うには、余裕が大切なのです。
常連になるためのノウハウとは?
「常連さん=何度もそのバーに通っている人」というのは、実は勘違いだそうです。
「常連さん=バーテンダーさんに覚えられて、大切にされているお客さん」が正解。
そのために一番重要なのは、「一度行ったら、あまり時間を空けすぎずにもう一度行くこと」だそう。
良いバーなら、お客さんの顔はほとんど覚えていて「先日はどうも!」と声をかけられるはずです。
2回目は、予算を抑えたければ1杯でもOKなので、とにかく臆さずにすぐに足を運んでみてください。
とはいえ、1杯だけお酒を頼んで長々と居座るのはマナー違反です。
できれば、お酒はぬるくならないうちに飲みましょう。
特に金曜や祝前日の夜など混みあうときに1杯だけで居座るのはNGです。
マナーを大切に、バーテンダーさんからも「また来て欲しい」と思われるお客さんになることが、常連さんの条件です。
「バーに行く自信がない」という方は是非、渋谷の『石の華』さんへ。
石垣さんが、しっかりとサポートしてくださいます。
編集後記
国際バーテンダー協会公認の世界大会で、東洋人で初めて優勝を飾った、名実ともに日本トップクラスのバーテンダー!
そんな石垣さんが教えてくださった『バーの流儀』は、「女の子にモテるために、バーが似合う男になりたい!」という、ヨコシマな私の考えが打ち砕かれてしまう、とても深いお話でした。
(編集部注:この記事は、2016年にインタビューされたものです。)
石垣 忍さんプロフィール
2002 全国バーテンダー技能競技大会で優勝
2003「Bar 石の華」を渋谷にオープン
2005 IBA(国際バーテンダー協会)公認の世界大会(イタリア・ トリノにて開催)に日本代表として出場。
最も権威のあるシニア部(29歳以上)において優勝。世界一になる。
(第40回BACARDI MARTINI GRANPRIX 2005 大会史上初、東洋人優勝 を飾る)
国際的な美術展、老舗高級ブランドのオープン記念等でイメージ カクテルの考案に当たるなど、多方面で活躍。
「CALPIS BarTimeR」「SEIKO MECHANICAL 石垣忍カクテルモデル」 等をプロデュース。
Bar 石の華
TEL: 03-5485-8405
東京都渋谷区渋谷3-6-2 第2矢木ビルB1
(定休日:日・祝)
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