»ネット上で「非モテ」をキーワードに常に話題を振りまいてきた永上裕之さん。サイトづくりの考え方について聞いてみました。

「非モテSNS」や「非モテ+」など手がけてきた、株式会社ホットココアの社長、永上裕之さん(26)は男性服の通販サイト「メンズファッションプラス」をオープンさせた。いったい、「非モテ」と「ファッション」はどう関係あるのか、と思っていたのだが、話を聞くと、そこには意外な繋がりがあった。「脱非モテ」を「ファッション」を手段として実現しようというのだ。筆者は、ネットでのコミュニケーションを「恋愛」や「生き方」、「事件」などをキーワードに取材をしてきている。その意味で、「非モテSNS」を運営してきた永上さんがファッションサイトを開設したことに興味を持った。

»『非モテ』をテーマに開設してみたいと思った


2008年11月25日、永上さんは「非モテSNS」をつくった。「非モテ」という言葉はもともとネットスラングで、テキストサイト等でよく使用されていた。異性から好感を寄せられず、恋愛対象にならない「非モテ」たちが傷を舐め合い、さらに非モテの男女の出会いの場として開設していた。SNSという手段をとったのは、ニッチなSNSが流行っていたからだ。

 「SNSの流行もあって、ニッチなSNSも出始めている時期でした。2ちゃんねるのような匿名性があり、メッセージ機能がついているSNSで、『非モテ』をテーマに開設してみたいと思ったんです。でも、実名で登録すると勇気がいる。だから、匿名のアイデンティティで十分でした。そうすることによって価値観を作り上げたかったんです」

 「今思うと、興味があるから『恋愛』をテーマとしたwebサービスににこだわったわけではないです。ネットでいろんなサービスを提供するなかで、結果的に『非モテSNS』という方向性が決まって行ったんです」

 ネットでエンタメを提供していくうちに、非モテに結びつく。当時のネット上では、『クリスマス中止のお知らせ』という非モテたちのアンチ・クリスマスな雰囲気があり、クリスマス粉砕デモも秋葉原で行なわれていたりした。どこまでは本気でどこまでがエンタメなのか分からないノリもあったりしていた時期だ。

»日記中心SNSが流行らないという時代の流れ

 しかし、日記を中心としたSNSが流行らない時代、実は「非モテSNS」も2013年8月末をもって閉鎖する予定だ。そして、ニュースフィードを中心とした「非モテ+」に統合させる。「非モテSNS」では、恋人ができたら即退会、というルールがあったが、「非モテ+」では、恋人がいたり結婚していても、リア充ではなく、「非モテ」の自覚があれば参加が可能としている。

 「SNSや日記系のサイトは、ユーザー自身が継続するのが難しいですね。ビジネス的にも難しい。『非モテSNS』の方針だと、会員のスケールがせいぜい7~8万人。それに、日記中心のSNSが流行らないという時代の流れもあり、役目を終えたと感じています」

 そんな中、昨年5月、非モテ男子のためのファッションサイト「メンズファッションプラス」をオープンさせた。これは「非モテ」たちと出会いを重ねることでたどり着いた答えだった。

 「オフ会などでユーザーたちと会ったんですが、オシャレに興味がない自分から見ても、なかなか『ダサい』『おしゃれではない』という感じが抜けず、彼女ができないという男性たちが多かった。彼らは24時間、その感じが抜けない。だとすれば、まずは見た目でそう思われないことが大事です。もちろん、それは本質的ではない。今の流行に流されてもいい。流されるまま流されることでいいんです」

»外さないことをメインに

 そこで生まれたキーワードが「無難ファッション」なのだ。

 「非モテ男子の服を普通の女子大生にコーディネートしてもらったんです。外さないことをメインに考えて選んでもらいました。そうすると、以前よりも『カッコいい』となったんです。プロのコーディネーターが選んだとしても、そんな服を買えなかったり、着こなせなかったりすれば意味がない。普通の女子大生が『カワイイ』『カッコいい』と思われればいい。平均的でいいんです」

 目指す方向性は「キレイめカジュアル」だという。インタビューのときに永上さんのファッションのポイントを聞いてみた。

 「ベージュのチノパンと、白のシャツです。デニムだとオタクっぽく見えてしまう。シャツも白か黒、グレーというシンプルなものがいいと思うんです」

 ただ、ファッションといっても、最終的にはそうした服を着こなすには体型に左右される。そのため、「ダイエットをすすめている」とも言う。

»「非モテ」同士の傷の舐め合いから、「脱非モテ」へ。

中学時代から数々のウェブサービスを世に送り出して来た永上さん。私が興味を持ったきっかけは、やはり「非モテ」という言葉が流行った頃だった。主催した、クリスマスに非モテのオフ会にも私は参加したことがある。徐々に「非モテ」ブームを牽引した一人として、注目が集まっていたころだ。

初めてインタビューしたときは、会話も上手にこなしている印象だった。しかし、本人曰く、「会話をするのは下手」だという。モテの一つの要素として会話術があると私は思うが、苦手意識が高いということは「非モテ」意識があるんだろう。

「非モテ」はその要素として、「誰かに見られている」という感覚が希薄だったりする。「メンズファッションプラス」は、「見られること」を意識して、「非モテ」を脱しようという考え方が反映されている。

「非モテ」同士の傷の舐め合いから、「非モテ」から脱する方向への一歩を踏み出した永上さん。その流れは、生き方を模索している中で永上さんが見つけたものかもしれない。と同時に、ユーザーたちが生き方を模索していることを肌で感じ取ったものだ。「非モテ」にこだわり続けて来た永上さんだからこそ、こんな事業展開ができるのだろうと感じた。

執筆: 渋井哲也

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