

【ビジネス敬語】「ご了承いただき」の正しい意味と使い方|目上の人への敬語マナー完全ガイド
ビジネスシーンで頻繁に使われる「ご了承いただき」という表現。あなたは本当に正しく使えていますか。実は、この敬語表現には意外な落とし穴があり、使い方を間違えると相手に失礼な印象を与えてしまうことがあります。
特に20代のビジネスパーソンにとって、敬語の使い方は社会人としての評価に直結する重要なスキルです。メール一通、電話一本で、あなたの印象は大きく変わります。正しい敬語を使いこなせる人は、仕事ができる人として認識され、信頼関係も築きやすくなります。
本記事では、「ご了承いただき」という表現について、その正確な意味から実践的な使い方まで、徹底的に解説していきます。この記事を読み終える頃には、あなたも自信を持って「ご了承いただき」を使いこなせるようになっているはずです。
目次
「ご了承いただき」の基本的な意味と成り立ち
「了承」という言葉の本質を理解する
「了承」という言葉は、「事情を理解して承諾すること」を意味します。単なる「承諾」とは異なり、相手の事情や状況を理解した上で、それを受け入れるというニュアンスが含まれています。
この「了承」に敬語の「ご」を付けて「ご了承」となり、さらに「いただく」という謙譲語を加えることで、「ご了承いただき」という敬語表現が成立します。つまり、相手に対して「事情を理解して承諾してもらう」ことを丁寧に表現した言葉なのです。
ビジネスシーンでこの表現が多用される理由は、単に「はい」「いいえ」で答えられるような単純な承諾ではなく、相手に何らかの事情や条件を理解してもらった上で、それでも受け入れてもらいたいという場面が多いからです。
「ご了承いただき」の文法的構造
この表現を正しく理解するためには、その文法的構造を把握することが重要です。
● 「ご」:尊敬語の接頭語
● 「了承」:理解して承諾するという意味の名詞
● 「いただく」:「もらう」の謙譲語
この組み合わせにより、相手の行為(了承すること)を高めつつ、自分の立場を低くする謙譲の意味合いが生まれます。これは日本語の敬語システムの中でも、特に丁寧な表現方法の一つです。
類似表現との違いを明確にする
「ご了承いただき」と似た表現として、以下のようなものがあります。
● ご理解いただき:事情を理解してもらうことに重点
● ご承知いただき:知ってもらうことに重点
● ご容赦いただき:許してもらうことに重点
● ご了解いただき:内容を理解してもらうことに重点
これらの表現は似ているようで、それぞれ微妙にニュアンスが異なります。「ご了承いただき」は、単に理解してもらうだけでなく、その上で承諾してもらうという二段階のプロセスを含んでいる点が特徴的です。
目上の人に対して使う場合の注意点
実は目上の人には使いにくい理由
「ご了承いただき」という表現は、一見すると非常に丁寧な敬語に思えますが、実は目上の人に対して使う際には注意が必要です。なぜなら、この表現には「相手に何かを認めてもらう」「許可をもらう」というニュアンスが含まれているからです。
目上の人に対して「了承してください」と言うことは、ある意味で相手に判断や決定を求めることになります。これは場合によっては、相手に負担や責任を押し付けているように受け取られる可能性があります。
特に、自分の都合や事情を相手に押し付けるような文脈で使用すると、「私の都合を理解して受け入れてください」という一方的な要求に聞こえてしまうことがあります。
目上の人への適切な言い換え表現
目上の人に対しては、以下のような表現を使うことをおすすめします。
● お含みおきください
● ご理解賜れますと幸いです
● ご容赦くださいますようお願い申し上げます
● 何卒ご理解のほどお願い申し上げます
これらの表現は、相手の理解や許容を求めつつも、より謙虚で控えめな印象を与えます。特に「お含みおきください」は、「心に留めておいてください」という意味で、相手に判断や承諾を強要しない柔らかい表現です。
相手との関係性による使い分け
ビジネスシーンでは、相手との関係性によって適切な表現を選ぶことが重要です。
直属の上司に対しては、日頃の関係性にもよりますが、あまり堅苦しすぎる表現は避け、「ご理解いただければ幸いです」程度の表現が適切です。一方、取引先の重役や初対面の目上の方に対しては、より丁寧な「ご理解賜れますと幸いです」「お含みおきくださいますようお願い申し上げます」といった表現を使うとよいでしょう。
ビジネスメールでの実践的な使い方
事前の了承を求める場合の例文
ビジネスメールで最も「ご了承いただき」を使う場面は、事前に相手の了承を求める場合です。以下、具体的な例文を見ていきましょう。
会議の日程変更を知らせる場合: 「誠に恐れ入りますが、明日の会議を来週月曜日に変更させていただきたく存じます。急な変更となり申し訳ございませんが、ご了承いただけますでしょうか。」
この例文では、相手に迷惑をかけることを前提として、それでも了承してほしいという気持ちを表現しています。「誠に恐れ入りますが」という前置きを入れることで、相手への配慮を示しています。
納期の延長をお願いする場合: 「製造工程で予期せぬトラブルが発生したため、納期を3日ほど延長させていただければと存じます。ご迷惑をおかけして大変申し訳ございませんが、何卒ご了承いただけますようお願い申し上げます。」
この例では、トラブルの発生という事情を説明した上で、納期延長の了承を求めています。「何卒」を加えることで、より丁寧な印象を与えています。
事後報告で使う場合の注意点
「ご了承いただき」を事後報告で使う場合は、特に注意が必要です。既に実行してしまったことに対して「了承してください」と言うのは、相手に選択の余地を与えない一方的な通告になってしまうからです。
適切でない例: 「会議室を変更しました。ご了承ください。」
これでは、相手に有無を言わせない印象を与えてしまいます。
適切な例: 「諸般の事情により、会議室をA会議室からB会議室に変更させていただきました。急な変更となり申し訳ございません。ご理解いただければ幸いです。」
事後報告の場合は、「ご了承ください」よりも「ご理解いただければ幸いです」「お含みおきください」といった表現の方が適切です。
社内メールと社外メールでの使い分け
社内メールと社外メールでは、「ご了承いただき」の使い方に違いがあります。
社内メールの場合: 比較的カジュアルに使うことができますが、それでも相手の立場や関係性を考慮する必要があります。同僚や後輩に対してなら「ご了承ください」でも問題ありませんが、部長以上の役職者に対しては「ご了承いただければ幸いです」といった、より丁寧な表現を使うべきです。
社外メールの場合: 取引先や顧客に対しては、より慎重に使う必要があります。特に、自社の都合で相手に不便をかける場合は、「ご了承ください」という表現は避け、「ご理解賜れますようお願い申し上げます」「お含みおきくださいますようお願い申し上げます」といった、より丁寧で謙虚な表現を選ぶべきです。
「ご了承いただき」の適切な使用シーン
システムメンテナンスの案内
IT関連の業務では、システムメンテナンスの案内で「ご了承いただき」を使うことが多いです。
例文: 「○月○日の午前2時から午前5時まで、システムメンテナンスを実施させていただきます。この間、サービスをご利用いただけません。ご不便をおかけしますが、ご了承くださいますようお願い申し上げます。」
この場合、メンテナンスは必須の作業であり、ユーザーに選択の余地はありません。しかし、それでも丁寧に了承を求めることで、企業としての誠意を示すことができます。
規約やルールの変更通知
サービスの利用規約や社内ルールの変更を通知する際にも、「ご了承いただき」はよく使われます。
例文: 「この度、弊社サービスの利用規約を一部改定させていただくことになりました。主な変更点は以下の通りです。(変更内容)新規約は○月○日より適用となります。何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。」
規約の変更は一方的な通知になりがちですが、「ご了承いただき」を使うことで、利用者への配慮を示すことができます。
イベントや企画の変更・中止
イベントの変更や中止を告知する際も、参加者の理解と了承を求める必要があります。
例文: 「誠に残念ながら、○月○日に予定しておりました弊社創立記念パーティーは、諸般の事情により中止とさせていただくことになりました。参加をご予定いただいていた皆様には大変ご迷惑をおかけしますが、何卒ご了承いただけますようお願い申し上げます。」
このような残念なお知らせの場合、「誠に残念ながら」「大変ご迷惑をおかけしますが」といった前置きを入れることで、相手の気持ちに配慮していることを示すことが重要です。
よくある間違いと正しい使い方
「ご了承してください」は間違い?
「ご了承してください」という表現を見かけることがありますが、これは文法的に正しくありません。「ご了承」の「ご」は尊敬語の接頭語ですが、「してください」は丁寧語であり、敬語のレベルが合っていないのです。
正しくは以下のようになります:
● ご了承ください
● ご了承くださいませ
● ご了承いただけますでしょうか
● ご了承くださいますようお願いします
「ご了承ください」が最もシンプルで一般的な形ですが、より丁寧にしたい場合は「ご了承くださいませ」や「ご了承いただけますでしょうか」を使います。
「ご了承いただきありがとうございます」の使い方
相手が了承してくれたことに対してお礼を言う場合、「ご了承いただきありがとうございます」という表現を使います。しかし、この表現にも注意点があります。
まず、相手がまだ了承していない段階で使ってしまうという間違いがあります。例えば、「来週の会議を延期させていただきます。ご了承いただきありがとうございます」というような使い方は不適切です。相手はまだ了承していないのに、勝手に了承したことにされているように感じてしまいます。
正しい使い方の例: 「先日お願いしました納期延長の件、ご了承いただきありがとうございます。おかげさまで品質の高い製品をお届けできる見込みです。」
このように、実際に相手が了承の意思を示した後に使うのが正しい使い方です。
二重敬語に注意
「ご了承いただき」に関連して、二重敬語になってしまうケースも見受けられます。
間違いの例: 「ご了承していただけますでしょうか」
この表現は、「ご了承」の「ご」(尊敬語)と「していただく」(謙譲語)が重なっているため、二重敬語となってしまいます。
正しくは: 「ご了承いただけますでしょうか」 「了承していただけますでしょうか」
どちらか一方の敬語表現を使うようにしましょう。一般的には「ご了承いただけますでしょうか」の方がよく使われます。
相手や状況に応じた言い換え表現
より丁寧な表現が必要な場合
重要な取引先や、特に配慮が必要な相手に対しては、「ご了承いただき」よりもさらに丁寧な表現を使うことがあります。
● ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます
● 何卒ご高配を賜りますようお願い申し上げます
● ご賢察の上、ご了承賜りますようお願い申し上げます
これらの表現は、相手への最大限の敬意を示すものです。「賜る」は「いただく」のより丁寧な表現で、「ご高配」は相手の特別な配慮を意味し、「ご賢察」は相手の賢明な判断を期待する表現です。
カジュアルな場面での代替表現
社内の親しい同僚や、フランクな関係の取引先に対しては、もう少しカジュアルな表現を使うこともできます。
● ご理解ください
● よろしくお願いします
● ご協力をお願いします
● お願いできればと思います
これらの表現は、「ご了承いただき」よりも柔らかく、親しみやすい印象を与えます。ただし、カジュアルすぎる表現は失礼にあたることもあるので、相手との関係性を見極めて使うことが重要です。
英語での表現方法
グローバルなビジネスシーンでは、「ご了承いただき」を英語で表現する必要も出てきます。状況に応じて以下のような表現を使い分けます。
● Thank you for your understanding.(ご理解いただきありがとうございます)
● We appreciate your patience.(お待ちいただきありがとうございます)
● We kindly ask for your cooperation.(ご協力をお願いいたします)
● Please be advised that...(お知らせいたしますが...)
英語では日本語ほど細かい敬語の区別はありませんが、"kindly"や"appreciate"といった言葉を使うことで、丁寧さを表現することができます。
実践演習:シチュエーション別例文集
営業メールでの活用例
新商品の価格改定を通知する場合: 「平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。さて、原材料費の高騰により、誠に不本意ながら○月○日より新商品の価格を改定させていただくことになりました。詳細は添付資料をご確認ください。お客様にはご負担をおかけすることになり大変心苦しく存じますが、何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。今後とも変わらぬご愛顧を賜りますよう、よろしくお願いいたします。」
この例文では、価格改定という顧客にとって望ましくない内容を伝えていますが、丁寧な前置きと理由の説明、そして今後の関係継続への期待を込めることで、相手の理解を得やすくしています。
社内連絡での活用例
部署内での業務フロー変更を通知する場合: 「お疲れ様です。来月より、経費精算の申請フローを一部変更することになりました。主な変更点は、申請期限が毎月25日から20日になることと、領収書の添付が必須となることです。業務効率化のための変更となりますので、ご了承いただければ幸いです。ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。」
社内向けの連絡では、あまり堅苦しくなりすぎないよう配慮しつつ、必要な敬意は保つバランスが重要です。
カスタマーサポートでの活用例
お客様からのクレームに対応する場合: 「この度は、弊社製品に不具合があり、お客様にご迷惑をおかけしましたこと、心よりお詫び申し上げます。ご指摘いただいた件につきまして、すぐに確認いたしましたところ、製造過程での品質管理に問題があったことが判明いたしました。現在、全社を挙げて改善に取り組んでおります。交換品は○日以内にお届けいたしますので、今しばらくお待ちいただけますでしょうか。この度は誠に申し訳ございませんでした。何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。」
クレーム対応では、まず謝罪の気持ちを示し、原因と対策を説明した上で、解決までの時間的猶予について了承を求めるという流れが効果的です。
印象を良くするための追加テクニック
クッション言葉の効果的な使い方
「ご了承いただき」を使う際、クッション言葉を前に置くことで、より柔らかい印象を与えることができます。
効果的なクッション言葉の例:
● 恐れ入りますが
● お忙しいところ恐縮ですが
● 誠に申し訳ございませんが
● お手数をおかけしますが
● ご多忙中とは存じますが
例文: 「お忙しいところ恐れ入りますが、明日の打ち合わせを午後に変更させていただけないでしょうか。急なお願いで申し訳ございませんが、ご了承いただければ幸いです。」
クッション言葉を使うことで、相手への配慮を示し、お願いごとを受け入れてもらいやすくなります。
理由説明の重要性
「ご了承いただき」を使う際は、なぜ了承してもらう必要があるのか、その理由を明確に説明することが重要です。理由もなく「ご了承ください」と言われても、相手は納得しにくいものです。
良い例: 「システムの安定性向上のため、定期メンテナンスを実施させていただきます。より快適にサービスをご利用いただくための作業ですので、ご了承くださいますようお願いします。」
理由を説明することで、相手は状況を理解しやすくなり、了承してもらいやすくなります。また、透明性のある対応は信頼関係の構築にもつながります。
代替案の提示
相手に不便をかける内容について了承を求める場合、可能であれば代替案を提示することで、相手の不満を軽減することができます。
例文: 「誠に恐れ入りますが、ご希望の○月○日は会議室が満室となっております。代わりに○月○日または○月○日はいかがでしょうか。ご希望に添えず申し訳ございませんが、ご了承いただければ幸いです。」
このように代替案を示すことで、相手に選択肢を与え、一方的な通告という印象を避けることができます。
まとめ:ビジネスパーソンとしての敬語力を高めるために
継続的な学習の重要性
「ご了承いただき」という一つの表現を深く理解することで、日本語の敬語システムの奥深さを実感していただけたのではないでしょうか。敬語は単なる言葉遣いではなく、相手への配慮と敬意を示す重要なコミュニケーションツールです。
ビジネスパーソンとして成長していくためには、継続的に敬語力を磨いていく必要があります。日々の業務の中で、先輩や上司の言葉遣いに注意を払い、良い表現は積極的に取り入れていきましょう。また、ビジネス書や敬語に関する書籍を読むことも、語彙を増やし、表現力を高める良い方法です。
実践を通じた上達
敬語は知識として理解するだけでなく、実際に使ってみることで身につきます。最初は間違えることもあるかもしれませんが、恐れずに使ってみることが大切です。
メールを送信する前に、使っている敬語表現が適切かどうか見直す習慣をつけましょう。特に重要なメールの場合は、信頼できる先輩や上司にチェックしてもらうのも良い方法です。フィードバックを受けることで、自分では気づかなかった間違いや、より良い表現方法を学ぶことができます。
相手を思いやる心が基本
最後に、敬語を使う上で最も大切なのは、相手を思いやる心です。どんなに正しい敬語を使っていても、相手への配慮が感じられなければ、良好なコミュニケーションは成立しません。
「ご了承いただき」という表現も、単に形式的に使うのではなく、相手の立場に立って、どのような言い方をすれば気持ちよく受け入れてもらえるかを考えることが重要です。時には「ご了承いただき」という表現を使わず、別の言い方を選ぶ方が適切な場合もあります。
状況に応じて柔軟に対応できる敬語力を身につけることで、あなたのビジネスコミュニケーション能力は確実に向上します。そして、それは仕事の成果や人間関係の構築にも良い影響を与えるはずです。
この記事で学んだことを、ぜひ明日からの業務に活かしてください。正しい敬語を使いこなせるビジネスパーソンとして、さらなる活躍を期待しています。